長野は身体を学び、学生さんは心を学ぶ~朝霞准看護学校で実習のお手伝いをさせていただきました!~

 皆さんこんにちは。日増しに秋が深まりだんだんと冬の足音も聞こえてくる今日この頃、いかがお過ごしでしょうか?Try chance代表の長野です。

 今年の4月に始動した当団体の活動も気付けば半年余り。Try chanceには『挑戦すれば道は拓ける』という意味があります。現在は月に1度「誰もがありのままで主役になれる良質なコミュニティ」Ryo室空間の運営を軸に、それらの活動を配信で直接届けるコンテンツ=ながラジオ を中心に行っています。また、日々その理念を体現したいとの想いから、スピンオフとして私個人の活動も積極的に発信しています。

 そこで今回は、9月~10月にかけて行った”実習協力”の模様を、当団体のスマイルフォトグラファー:木村 理の写真付きでお届けしたいと思います。
 伺ったのは埼玉県朝霞市にある『朝霞准看護学校』さん。朝霞市保健センターの建物内、3Fに位置しています(1Fには児童家庭支援センターなどが併設されています) 。

「コロナ渦で学外実習ができなくなって困っているみたいだから(一緒に)協力してほしいと連絡をくれたのは、これまた運命的な出会いがきっかけで今春から利用を始めた介護事業所の社長さん。そんなわけで今回は私を含めた(身体障害)当事者3名が曜日をずらして出向することになりました。
(※ヘルパー事業所との一期一会の出会いなども、別途機会があれば書きたいと思います)

「患者モデル」という役割よりも大切だったもの

 事前に聞いていたのは「病院に入院している患者という設定で実習協力をしてほしい」ということ。実習前に自然と思い描いていたのは【ずっとベッドの上にいてあまり喋らず、たまにベッドのリクライニングを起こして体位を変えながら、食事も、もしかしたら排泄もベッド上で介護されるのかな(実習だから)】という勝手なイメージ。

[*分からないという方のために少し説明をしておくと、体位というのは身体の位置のこと。人は長時間同じ部分に圧力(体重)がかかりすぎると、皮膚が壊死して褥瘡(じょくそう)になってしまうのです。寝ている間に皆さんが寝返りを打つのもそのためで、無意識に褥瘡を予防しているから。だから、できない方々に対しては他者による”体位交換”が必要になります。]

 さてさて、実際の実習はどんな様子だったのか。
 それはもう、私が事前に描いていたイメージがいかに稚拙で浅はかだったことか。

「これだけ相手のことを考えて対話をする仕事はそうそうない!」

 これが、関わりを終えた私が今、感じている率直な感想です。それだけ学生さんは私のことを第一に考え、どうすればより快適に過ごすことができるのかを真摯に模索し続けてくれました。私も(当初のイメージを反省し)学生さんとどう向き合い、何をどのタイミングで伝えたら最大の学びになるかと、終始一貫して向き合ったつもりです。

 入院患者ゆえ、当初は”本田圭佑”という仮名で接するはずが、互いがパーソナルな部分をさらけ出し本音で対話を繰り返す中で、学校側から「もう長野さんでいいですか!?(笑)」と言われたことが、何よりの証だと思っています。素直に嬉しかったですね。

6日間の現地実習の様子

 それではここから、2回にわたって同行してくれた当団体のハートフルカメラマン、木村 理氏の写真とともにシーン別に振り返っていきたいと思います。

<対話編>

・・・いつでもどこでも、朝イチは対話が基本です!

学校に着いたらまず、その日のケアの説明を受けます。

また別の日も・・・

ベッド上でもそれは変わりません。「辛くないですか?」は1番聞かれたセリフ。

真剣な実習とはいえ、やはり対話を通して楽しみながら行える空気感を創っていくことが私の役割です。

全日程を通して学生の皆さんと先生方の素敵な関係性を目の当たりにし、時に厳しい指導を受けながらも先生を信頼し、「患者さんのために!」という同じ目的に向かってともにケアの準備をする姿が強く印象に残っています。

<ケア編>

・・・ともに学んできたケアの様子をご紹介します!

朝と帰宅前に必ず行う”バイタルチェック”
(学生さんは色違いのマイ血圧計を持っていました!)

補装具(靴)の履かせ方をレクチャー。私はいつもかかと→つま先の順で。曲がってしまう指は伸ばしながら最後に入れるのがポイント!(2度目からはつまずいても自分で聞いてくるまで何も言いません^^)

常に適温に保ちながら行ってくれた足浴。
身も心も温かくなりました!

「普段病院ではここまでやらない(笑)」とのこと。
・・・今回はショートステイの入院患者設定だからかな。

泡とオイルマッサージの後は熱布清拭で拭き取ります。

本当に1ヵ月にわたって丁寧に、安楽な体勢を模索し続けてくれました。
普段の日中では考えられないくらい、リラックスした顔をしております^^

病院食とは思えないくらい、ご飯も美味しかったです!
毎回、学生の皆さんから食べたいものを聞いて下さったのですが、実習なのであえて食べにくいものをチョイスしたり、皆さんと相談しながら決めていました。
(※写真は親子丼とポテトサラダ)

<番外編>

・・・ここも病院とちがいました!

一緒にごはんを食べたり・・・

有難いことに、即席サイン会もさせていただきました!

<最後に・・・>

 今回、1ヵ月にわたる実習協力を通してたくさんの先生方とも対話をさせていただきました。その中で特に印象に残ったのは、実習初日に副校長先生が仰っていた言葉です。

『ウチ(朝霞准看護学校)では「とにかく目の前の人に優しく真心を持って接する」ということを大切に教えています。ケアももちろん重要ですが、まずは人として対等に接するということを大前提に、実際の現場で患者さんの心に寄り添えるような学生を育てたい。
そこを最も大切にしているというのが本校の強みですかね』

 この言葉にすべてが集約されていると思います。この期間、出向で実際に学校に伺っても、リモートでアセスメントや振り返りを行う場面でも繰り返し感じていたことですが、本当に何度も何度も感謝を伝えてくれるんですね。ケアされて身体が楽になっているのは私自身のはずなのに・・・。

 気付けば、一連のケアを通して身体だけでなく心まで軽くなっている自分がいました。だからこそ、本音が言える。対話が深まる。「自分は入口とストッパーでいい」とは、私が実際に学生さんたちに伝えていた言葉です。

・入口だから聞いちゃいけないことはない(何でも聞いて!)
・この先現場で何か辛いことが会った時、「そういえば実習でこんな患者がいたなぁ。そういえば長野がこんな言葉を残してくれたな」

 そんなふうに思ってくれたら嬉しい。私はそんな想いから折りにふれ、(恩返しの意味も込めて)心を込めて言葉を伝えてきたつもりです。
 
 この記事のタイトル、長野は身体を学び、学生さんは心を学ぶ は、学生の皆さんと私、そして皆さんとの対話の結晶なのです。

<記念写真>

・・・関係者の皆さんから快諾いただいた”対話の結晶”を最後に掲載します。

1クール目のメンバーから2クール目のメンバーへの引き継ぎ

2クール目のメンバーとサイン本とともに・・・
(急きょご縁をいただいた先生も一緒に!)

2クール目のメンバーから3クール目のメンバーへの引き継ぎ

最終日。
3クール目のメンバーと、今回メインで学生さんの指導に当たって下さった先生も一緒に!

今回の実習協力にあたり、こちらから唯一お願いしたこと。
「素敵な関わりを団体(Try chance)のサイトにも掲載したい!」
・・・2つ返事で快諾して下さった副校長先生とともに。

すべての実習を終えて、最終日を創ってくれた皆さんと実習室にて。

 私事ですが、今回の関わりは1人暮らし10年目、フリーランスとして「石の上にも三年」を耐え抜いた自分へのご褒美だったのかな、と思っています(笑)そう思えるほど素敵な時間をいただきました。

 日々、Try chanceを掲げて活動を続ける私が最後の最後に伝えたいこと。それはやはり「挑戦すれば道は拓ける!」という信念です。
 たとえ今が辛くても、人との関わり次第できっと、自分らしく生きられる日が来る!

 これからも皆さんがそう思える場を地道に創り、日々を正直に魅せていくことをお約束します。

(撮影:木村 理/全面協力:朝霞准看護学校の皆さん)

このブログを書いた人

長野 僚
長野 僚Try Chance 代表
『障害を忘れられる瞬間』を掲げ活動する執筆家・講演家。脳性麻痺、1人暮らし10年目。2019年4月に本を出版。

2020年4月に『Try chance』を旗揚げ。「おかえり」といつでも言えるような温かい居場所『Ryo室空間』を創ることを目指している。 全国の子どもたちに元気を届けるのが次の夢!